受験×勉強×塾

初めまして!学習塾の中で教育に携わる「現役塾講師」の一人として、受験関係の話を中心に、塾の先生としてのあり方や良い塾の選び方、また勉強の方法などを日々考えています。自分にとっての戒めにもして日々精進…!記事タイトルの「」は塾業界等、『』は塾のリアルについて書いています。

「2月の勝者10巻」×「保護者会とメンタル」×「個別指導と中学受験」

『2月の勝者』の第10巻がいよいよ発売されましたね。

コミックス派の自分にとって、

毎回新しい巻が出るのはとても楽しみ。

もちろん全部が全部その通りではないけど、

「現実」にとても近く共感できる部分が多い。

 

今回のコミックス裏の赤字。

 

「ついに、2月入試本番を迎えます……!」

 

2月までついにきたかと思いきや、

実際に描かれているのはまだ11月辺りの話。

丁寧に書かれているのもとても嬉しい。

 

最初の1話は保護者会の場面からスタート。

黒木先生が11月以降に起こる「3回の危機」について語り、

保護者に「名俳優」になってほしいと頼み、

「あなた方ならできる」と強く言い放ち、一体感を作る。

 

とても悪い言葉を使ってしまうのなら一種の「洗脳」に近いのかもしれない。

だけど中学受験において、

「親の関わり方」は何よりも大切なものであるのは間違いない。

テストを受ける度に子どもの成績を見て不安になるのはわかるが、

その不安を顔に出してはいけない。

子どもの機嫌を取れ、というわけではなく安心感を与えることが大事。

だって成績が悪かったことくらいは子どもだって分かっている。

そこで怒る親に萎縮するなり、嫌になるなり、

あるいは、不安そうな親を見て自分はダメだと思ってしまったら、

明るい未来はその先に待っていない。

それこそ漫画にもあったように「百害あって一理なし」だ。

 

中学受験は「メンタル」

これは受験に関わる人はきちんと理解しておくべき。

 

そういう意味でこの保護者会で描かれた部分で一番大きいのは、

黒木先生の持つ「説得力」

保護者の「不安」を先回りして潰す。

事前に考え得る場面を想定、準備し、打てる手は打っておく。

更に緩急を使って話すことで信頼度を上げる。

こういう先生に出会えれば「メンタル」の拠り所になり得る。

「漫画だから」というのではなく、

塾の先生としては見習うべきだし、

逆に信頼出来る先生かどうかの見極めにも使えると思う。

まぁ話だけが立派な先生も多いから諸刃の剣な部分もあるけども。

 

 

その次の話は保護者会後の保護者の反応。

同じ話を聞いても状況によって捉え方は全然変わるということがよくわかる。

 

「人に聞いてもらうってすごく救われる」

「どこかに受からせてあげたい」

 

 

 

こうやって前向きに捉えられるなら、

子どもは安心して受験には臨めるのかなと思う。

 

 

一方でその後の個別指導の話。

受験を3ヶ月後に控えた保護者に対して、

その不安を煽るような話し方をする。

 

「今」「苦手な」分野を潰しとかないと、本番で戦えない。

「良い先生」や「人気講師」はすぐに埋まってしまう。

自習室では上手く出来ない部分を「細かく」フォローできる。

時間数が足りないから「増コマ」が必要。

 

そういう話し方をするのは、本当にその子やご家庭のことを考えているよりも、

「営業」としての場合が多い。

だって個別の授業を増やしたからといって成績が上がるとは限らない。

「受験生のため」だけを追求するなら、

別課題を作ってやる時間を作るなり、

個別の授業時間以外でも丁寧に見るようにするなり、

色んな方法があると思う。

 

僕自身が個別を回していた時には、

増コマを勧めたことはない。

講習中ですらコマ数は最低限で大丈夫ですと言っていた。

企業としてはよくないかもしれないけど、

自分の「営業ノルマ」のようなものは達成した上なので怒られたこともない。

ただ成績を上げることは必要。

だから代わりに自習にはたくさん呼ぶようにしていた。

個別では珍しいパターンかもしれない。

自習に来てくれれば課題を出すようにするし、質問対応も全力でする。

常にいっぱいいっぱいだったけど、

成績も上がったし、生徒も楽しそうだったし、評判も良かった。

僕が恵まれていた部分もあるけど、それでも成功していたケースだと思う。

 

というかそもそも今のコマ数で成績を上げられていない時点で、

現状のやり方がどこか間違っている。

それなのに別のやり方を提案するのではなく、増コマを勧める時点で、

少し疑問に思わないといけない。

「受け身」の状態で個別授業を受けるようになっていたり、

個別指導の時間でやれば良いやと思い、

その他の時間は集中した勉強をできなかったり、

個別指導の弊害が出てしまっている部分を直す方が先だと思う。

 

「増コマ」で出来るのは「目の前の安心感」を買うことだけ。

子どものためになるケースは少ない。

先生を選べる部分にしても、

高い金額を出せば「良い先生」に当たる確率は高くなるけど、

それが自分の子どもにとって「合う先生」かどうかはわからない。

「名前」のある先生は経験と実績はあるかもしれないけど、

それが全てではないということ。

逆に、今回の漫画の中で出てきた「スタンダード」の先生も、

その塾の中で認められた先生なのだから、ある程度以上は出来るはず。

もし出来ないのなら塾の信用問題にもなる。

まだ実績はないけど「良い先生」はいる。

 

結局、授業にお金を払っているのではなく、

自分の不安を減らすのにお金を払っているというだけ。

それにいくら払うのか。

いや、払おうとするのか。払えるのか。

 

僕は漫画にあった、個別で週1コマ80分で月47000円は高すぎると思う。

80分で教えられることなんて限られている。

そのわずかな個別の追加で偏差値が10も上がるなら集団塾なんて存在しない。

それでも安心はできる。

だから間違っているわけでもない。

よく考えてどこにお金を使うのかを決めるべきなのだと思う。

個別の利用は本当に難しい…。

 

長くなりすぎてしまったので、

一旦終了し、また次回続きを書いていきます。

 

僕ももっと信頼されるよう頑張ろう。

ありがとうございました。