受験×勉強×塾

初めまして!学習塾の中で教育に携わる「現役塾講師」の一人として、受験関係の話を中心に、塾の先生としてのあり方や良い塾の選び方、また勉強の方法などを日々考えています。自分にとっての戒めにもして日々精進…!記事タイトルの「」は塾業界等、『』は塾のリアルについて書いています。

「2月の勝者10巻②」×「塾講師のやりがいと中学受験」×「模試の判定と合格」

先日に引き続き『2月の勝者』10巻。

前回は保護者会と個別指導で思う部分を書かせていただいたので、

今回は第3話目から。

 

最初に出てきた灘の類題的な問題。

これは最上位クラスでなくても独りで解けないとダメなやつだから問題は微妙…。

ただ子どもの意見から導いている感じは良いなと思う。

褒め方だったり、乗せ方だったり、

緩急も合わせることで子ども目線で考えている感が出ている。

 

そんな最上位クラスを受け持っている灰谷先生のセリフ。

 

「問題が解けた時の充実した顔。自信にあふれた表情。

 これを見るためにこの仕事をしている。」

「僕は、あの子たちにとってのヒーローでありたい。」

 

塾の先生のやりがいというか、特権というか、

それがこの言葉の中に含まれているような気がした。

僕自身はヒーローになりたいとかそんな大層なことは考えていない。

だけど子どもにとって誇れる存在、頼れる存在ではありたい。

そして嬉しそうな表情、

もう一歩進んで「変わる・化ける」瞬間と出会えるのは、本当に幸せなことだと思う。

 

ただこればっかりはある程度やってみないと分からないし、

いくらやってもきちんと生徒に向き合わないと出会うことはできない。

もし出会えず悩んでいる先生がいるのなら、目線を変えると良いと思う。

子どもは本当に敏感だから、すぐ気付く。

保護者にそれは伝わり、安心出来る先生がいると口コミにもなる。

「良い塾」の1つの条件になり得ると僕は思う。

 

 

さて。

その後は「模試」と「人」の話。

模試については、とても敏感になりやすい。

だって「偏差値」で合格可能性を「数値」として出されてしまうから。

80%が出れば「受かる」と自信になる一方で、

30%が出たら「もう無理」と不安になる。

ただ「志望校合格」という面から考えるのならば、

正直、模試の偏差値や合格可能性の数値にはそこまで大きな意味はないと思う。

 

理由はすごく簡単。

「母体と問題の性質」だ。

模試にもよるが、基本的にいろんな偏差値帯の人が1つの模試を受ける。

レベルが高い人もいれば、低い人もいる。

受けた人のレベルによって「偏差値」はいくらでも変わる。

だからそんな不安定な数値に振り回されるのはもったいない。

 

さらには全員に意味のある模試にするために「満遍なく」出すことしか出来ない。

首都模試なら基礎の確認が多めな一方、

SAPIX模試なら難しい問題が多めだったり、

日能研模試や四谷合否合ならそこまで難しくないが解きにくい問題が混ざっていたり、

模試の特徴を押さえた上での話にはなるが、

それでもどこかの学校に合わせた問題ではない。

難しい問題は自分の受ける学校では必要ないかもしれない。

記述もいらないかもしれない。

簡単な問題は出ないからそこで点が取れても意味がないかもしれない。

だから「模試」で点数が悪くとも、

「志望校の過去問」で点数が取れたらそれで良い。

模試で一喜一憂するご家庭多い中で、これはとても希望があることだと思う。

 

過去問について言えば11月の時期に「10点マイナス」なら、

合格は十分可能だと思う。

というより、3ヶ月を残して10点足りないだけなら割と余裕もあると思う。

油断をしてはもちろんいけないが。

11月だと100点くらい足りなくても、まだ間に合うくらいだ。

 

勝負はあくまで「2月のスコア」であって、

最後の3ヶ月の子どもの伸びを侮ってはいけない。

「行きたい学校」なら尚更、だ。

諦める必要なんてないし、

学校を変えた方がいいという先生がいたら、まだ経験が浅いのかもしれない。

自信を持って「引っ張って」くれる先生かどうかをここで見極めて欲しい。

 

 

そして、不安をかき消してくれるのが、後者の「人」である。

子どもにとって一緒に頑張れる「友達」は心強い。

迷惑になる場合ももちろんある。

だけど切磋琢磨することは、多かれ少なかれ中学受験の中では大切だと思う。

何より上手くいけばとても「楽しい」から。

 

親同士にとっては「不安や辛さを共有できる関係」があると心は楽になる。

ただお互いがライバルでもあるから、

大事な情報ほど話さなくなり、嫉妬や憎しみに発展する場合もある。

それでも「一人じゃない」ことはとても大事。

馴れ合う必要はないけど、良好に話せる人がいた方が結果は伴う。

 

塾の先生とは「なんでも相談できる関係」だととても良い。

面談で子どもの様子だけでなく、家の様子や雑談ができるくらいだと、

最後まで不安にならないでいられると思う。

少なくとも塾側に言えずに家庭教師や個別塾を入れても上手くいかないことが多い。

お互いに信頼しないといけないということだ。

 

そうやって受験を「母親一人で」抱え込まずに進める方が良いと、

その後の話を読んで改めて思った。

 

 

後は佐倉先生のセリフ。

 

「私は「勝ち」という言葉から逃げた。でもちゃんと向き合おう。

 悔いのないよう、全力で。」

 

受験にとっての「勝ち」は一つではないと僕も思う。

だけどそこに拘ってこその塾の先生。

僕もこの「覚悟」をきちんと背負いたい。

 

 

今日。

「共通テスト」が行われ、いよいよ大学受験も始まる。

新しい1ページが描かれる。

みんなが力を出し切ってくれると良いなと心から思う。

 

僕も期待に応えたい。

ありがとうございました。