受験×勉強×塾

初めまして!学習塾の中で教育に携わる「現役塾講師」の一人として、受験関係の話を中心に、塾の先生としてのあり方や良い塾の選び方、また勉強の方法などを日々考えています。自分にとっての戒めにもして日々精進…!記事タイトルの「」は塾業界等、『』は塾のリアルについて書いています。

「2月の勝者9巻」×「”船”に乗せた人」×「塾と介入の現実」

8月7日に「2月の勝者 第9巻」がいよいよ発売。  

全巻が出たのが6月くらいだから、

今回はだいぶ間隔が短い。

単行本派の自分にとってはとても嬉しい。

 

細かい内容はネタバレも含んでしまうため、

またざっくりした感じで書かせていただきますが、

本当に共感することも、勉強になることも多い。

特に深く心に届いたものだけあげてみようと思う。

 

まず一つ目。

コミックスの裏にも書かれている、

「3年間も積み重ねてきた本人に諦める気はない。

 彼を"船“に乗せたのはあなた方だ」

というセリフ。

 

いや本当にその通り。

「中学受験」という船に自分から乗る小学生なんてほとんどいない。

その中で、本人の将来を楽にしようという考えだったり、

やってみたら点数が取れたからということだったり、

周りへの見栄だったり、

学童が終わった後の託児所のような意味合いだったり、

本当に様々な理由でその船に乗ります。

 

最初は大きな期待をしていなくても、

気がついたら大きな期待をかけていて、

しかも「受験」がゴールであるかのように扱ってしまって、

子どものことはどこかに置き忘れているような事態が本当によくあります。

漫画の中の言葉を使えば前巻に出てきた「狂気」でしょうか。

 

「誰のために」

「何のために」

 

これを常に考えておくことは中学受験をする上では必要です。

僕自身の受験したきっかけはお恥ずかしながら、

「クーラーとテスト休みが欲しい」という不純な動機でした笑

それでも続けられたのだから理由なんてなんでもいいと思います。

気がついたら新しいことを知れるのが楽しく、

塾や勉強自体を楽しめるようになっていました。

ともかくきちんと目的意識を持っている子どもの方が強いので、

きちんと話して目的を決めてあげるといいと思いますし、

塾の先生はその辺りを引き出せるようになると強いのかなと思います。

 

一方で2つ目。

本当の意味で「当事者」でない塾の先生の「ご家庭への介入」に対する考え方。

これは非常に難しい…

 

確かに本気で喜んで、怒って、一緒に泣いて、本気で感謝され、

辛いことや悲しいことも全部共有してきたはずなのに、

受験が終わったらそれで終わりになる生徒が多いのは確かです。

良くても制服見せにきてそれでおしまいみたいな。

お互い「新しい場所」があるので仕方ない部分も当然だと思います。

保護者からしても「受験」が終わったのだから塾に関わる意味はないですし。

 

そう考えて、

「中学受験の1〜4年間」「高校受験の1〜3年間」「大学受験の1〜6年間」

どの年代をとったとしても、

関わっているのは本当に一部だけなんです。

その中で「ご家庭への介入」をするのは考えものだという話。

 

正直正論だと思います。

 

だけど僕自身は、

ご家庭の考え方を第一にはしますが、

子どもの気持ちだったり、

間違っている部分だったり、

きちんと言わないといけない部分があると思っています。

それで考えが合わず、たとえ塾を辞めることになったとしても、

僕はいいのかなと思います。

 

「当事者」にはなれないけど「当事者意識」は持ってもいいのかなと。

去年の受験生の中で、

「僕に会わなかったら、受験も出来ず警察沙汰にもなっていた」

と笑って言っている生徒がいます。

僕と会話をすることで、

上手くストレスの発散ができ、精神的にも落ち着いたみたいです。

 

頭のキレはかなり良い子だったので、

クラス落ちしたら…とか成績悪かったら…とかそんな不安から、

暴れてしまうことが多かったみたいですが、

本気でぶつかってくれ、ちやほやするわけでもなく、何より楽しかったみたいです。

 

保護者には、受験まで本人がもてば十分だし、

受からなくても仕方ないと言われましたが、

僕は最上位に受かって学校を選ぶべきと本人に言い聞かせました。

これも「介入」にあたるのか分かりませんが、

結果、愛知・千葉・東京・神奈川の最上位校に合格し、

5戦5勝で受験を終えました。

今は紆余曲折ありますが、

プログラミングにハマっているみたいで連絡をとっています。

 

僕は偉そうに言える立場でもなんでもありませんが、

「自分にできること」はしっかりしたいし、

それが「ご家庭への介入」も含むのなら、

その分覚悟を決めて「当事者意識」で臨めばいいのかなと思います。

これは会社勤めだと相当な勇気が入りますが…

でも僕自身は介入して間違ったとは思っていません。

 

だけど正論はこっちではないのはわかる。

…この辺りが難しいと思うところです。

 

色々考えさせられる9巻でした。

ありがとうございました。