「四谷大塚の新たな兵器?」×「中学受験と志望校対策」×「AIと感情と大手」
数日前のニュースになるが、目を引いたものがあった。
「ナガセ・四谷大塚が『志望校別単元ジャンル演習』を新たに開発」
ということで。
AIを活用し、個人別の学力の状況に応じて、
その生徒が志望校入試において得点力を最大化できる個人別の演習プログラムを、
東進で培った演習講座を元に、
中学受験生向けに開発したコンテンツというわけだ。
具体的には、
全国有名中学校の入試問題を単元・ジャンルというタテ糸・ヨコ糸で分類、
難易度や出題方式によって分類・分析をし、
入試問題の特徴や出題傾向・頻度などを把握していく。
これにAIの力を掛け合わせたオリジナルの分析により、
中学校ごとの入試分析と対策を作る。
さらに普段のテストの生後データをもとに、
一人ひとりの最大の伸び代となる弱点単元やジャンルを診断し、個別最適化する。
結果、
「百万人いれば百万通り、生徒一人ひとりに応じた個人別の志望校対策を実現する」
という目標が達成できるとしている。
さて。
個人的には「一人ひとりを大切にする」という姿勢を大事にするのは好き。
大手でもそういう方針を取り始めたのは単純に嬉しい一方で、
逆にそうしないと大手でも危ないと思い始めたのかと危惧する部分もある。
というのも。
この前半部分の過去問の分析については、
塾に関わっている身だったらその差は人によってあれど、誰でもやっている。
そもそも首都圏の学校の傾向把握と分析をしないと授業の効果は薄まる。
その当たり前のことを改めて「アピール」したのは、
ハチマキを巻いて授業だけをしていれば良かった時代からの変革に思える。
スパイスとしてAIを取り入れ、
膨大な資料を処理させ、精度を上げることで、加速度が増す。
AIによって伸び代を見つけ、分野ごとに徹底した復習をすることで、
「必要な勉強」を必要な分だけやっていく。
1つの試みとしてとても良いと思うが、そうやって新しい波を起こさないと、
塾業界で淘汰されると大手も思い始めているのかもしれないのが不安と思う。
そして僕自身は、この試みに対して懸念点がある。
一番の懸念が、
「感情を置き去りにしている」と言うこと。
テストに感情とか言っている時点で甘いのかもしれないけど、
相手は小学生。
気持ちの持っていき方一つで成績は大きく変わる。これは間違いない。
その些細な変化に気付けるかどうか、
あるいは気付こうとする気持ちがなければ、
「一人ひとりのための個別最適化」は出来ないと思う。
出来たとしてもただの言うことを聞く何か、になるだけで大きな成長はない。
受験が終わって、中学に入って爆発する例も何度も見てきた。
そのまま成長していっても自発性とか相手の感情の理解とか、
色々なものを犠牲にしかねない。
本当に大切にするのであれば、まだまだAIでは心許ないと思う。
そのために見ている先生もいるのだろうが、
分析はAIがどうせしてくれるからと言ってだんだんと目を逸らし始め、
分析結果として出た問題をひたすらにこなさせる。
そこに勉強の楽しさとか自由な発想は生まれず、頭の良い子はいなくなる。
それでも受験に受かれば良いじゃん、と思うかもしれないが、
単元ごとの苦手分野のプリントを順番にやっていけば合格できるなら、
塾はこんなにいっぱい存在しない。
特にレベルが上がれば上がるほど、
分野が跨っていたり、本当によく考えないと解けない問題が多くなる。
大学受験に比べて中学受験はその辺りも難しい。
だから面白いのだけれども。
結局のところ、
小学生の持つ可能性を広げるために一番大事なピースである「感情」を置き去りにしている点
最上位校などにはすぐに役立てるのは難しそうである点
から考えて改良の余地はある。
勉強するのは生身の人間なのだから。
まぁ保護者的な安心感は得られそうだなと思う部分はあるので、
営業面としてはまずますいいのかなと思うし、
個人的にはどの程度のものかを見てみたいと思う。
だけど本当に一人ひとりの「思い」も汲み取ってほしい。
ここを大切に出来る塾が増えてほしい。
僕も「思い」を大事に出来るよう頑張ろう。
ありがとうございました。