「塾の合格実績の罠」×「正しい見方と広告の見せ方」×「塾選びと自分ごと」
「数字」を正しく見るというのはとても難しい。
受験合格実績が出る時期によく言われることの1つに、
「各塾の合格者数を足しても、学校側の合格者数と合わない」
という話がある。
単純な話で、いくつかの塾に所属していた場合、
どちらの合格実績としてもカウントされているために起きる現象。
ずっと個別を併用していた、というような例ならまだ分かる気もするが、
早稲アカのNN特訓のような学校別対策形に参加していたとか、
ひどい場合には籍だけ置いている状態ということもあるらしい。
いわゆる「水増し」問題である。
少し前には臨海セミナーとSTEPの件でも出てきた問題は、
一般的に起こっているということが窺い知れる。
さらに各塾とも「見せ方」を工夫する。
大手塾では塾全体の学校名と人数をひたすら列挙することが多い。
つまりは「各校舎」での実績は明示されない。
人数がとても多く見える一方で、
塾全体での実績が良かったとしても、自分が通う校舎がどうかは分からない。
また中堅塾では、
良かった年や校舎は校舎ごとに出しておいて、
そうでない年や校舎は地域でまとめて出したり、数年分をまとめて出したりする。
いずれも「安心感」や実績の凄さを演出するためだ。
個人的には毎年出し方が変わる塾は信用しにくいと思う。
良かった実績の年は見せびらかし、
実績が悪かったらそれを「隠す」ような塾なのだから、
子どもがやっていることと変わらない。
結局目の前の子どもよりも「自分達」が可愛いのかなと思ってしまう。
良くても悪くても、きちんと受け止める塾の方が本気度は高い気がする。
個人塾については、少し扱いが難しい。
人数が多くない場合、個人の特定回避のために全ての実績を出せない場合がある。
何年も続いていれば数年分として出せるかもしれないが、
初期段階ではなかなか出しづらい部分もあると思う。
大体トップの子がどのくらいなのかさえわかれば、
「指導力」や「授業力」は足りている証明にはなるから、
あとは実際に雰囲気を見にいくのがいいのかなと思う。
もう一つ見せ方で、
「昨年と比べて◯%増加」とか「定期テストで◯点増加」とか、
そういう数字の変化を見せる塾もある。
棒グラフを使っていかにも差があるような感じにしておいて、
実際は5名→6名だったりとかそういう場合もある。
あるいは学校のまとめ方を変えてうまく見せることもある。
こう考えていくと、本当に「広告」から判断するのは難しい。
基本的に自分たちが不利になるような、マイナスの情報は書かない。
偏差値の高い学校に受からなければ、
「第一志望合格率◯%」といって別の言葉に変える事もできる。
塾業界が「教育業」ではない所以はこの辺りにもあるんだろうなぁと思う。
なんというか誠実さが足りない。
まぁ営利企業だから仕方ないのは重々承知しているが。
それでも「やったもんがち」みたいな部分はどうしてもあるから、
たとえどんなに良い先生がいる塾であったとしても、
その塾が流行るかどうかはまた別の話になってしまう。
世知辛い話だと思う。
さて。
実績という「広告」に惑わされないようにするためにはどうするか。
あくまで数字は「数字」であり、それ以上の価値はない。
もちろん、カリキュラムが揃っているかどうか、
合格のために必要なことがきちんとわかっているかどうか、は分かる。
所謂「情報面」での安心感が強まると言えるだろう。
だけど、これから通う子どもにとっては何の関係もない。
その方針が合うのか。
本当にその学校に行きたいのか。行くべきなのか。
ちゃんとついていけるのか。覚悟はあるのか。
ゆっくり考えたいのか。どんどん進んで欲しいのか。
無理してないか。余裕があるのか。
・・・
本当に大事なのは「名前」や「看板」ではなく「中身」じゃないのかと思う。
超有名な高級店の料理よりもカップラーメンのが落ち着くことだってある。
「偉い先生」の一言より「信頼している先生」の一言の方が心に響く事もある。
「合格実績」という看板の下で苦しく勉強するよりも、
「その子にあった指導」をしてくれる場所でのびのび勉強をした方がいい。
無理してその塾にいても全員が受かるわけではないのだから。
そうやって自分の受験を「自分ごと」にして良く考えること。
これが広告に惑わされないためには必要だと思う。
もちろん、最初の入り口として「合格実績」の看板を見て話を聞くのも良いと思う。
単純な今年の「数字」ではなく、
数年間の見せ方も含めて検討をしていくことが必要だと思う。
色々な面から検討して、良い塾選びが出来ればいいし、
塾側は選んでもらえるよう「子どものために」努力をし、
そういう先生が認められるようになれば良いなと思う。
僕も頑張ろう。
ありがとうございました。